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タクシーを捕まえて乗り込むと「オススメのカフェへ」とおちゃらけて指示する。すると運転手も「お宅は立ち飲み派? 椅子飲み派?」という質問が飛び出してきた。
「ゆっくりと味わいたいと思ってるよ」
――そういえばイタリアじゃカフェは立ち飲みが多かったな。むしろ多数派じゃなかったか?
文化というのは独特な趣がある、一時期住んでいたこともあってか衝撃は少ない。通りをちょっとだけ走って角の店の前で停まる「スフィージーカフェだよ、ここのセガフレッドブレンドは逸品だ」十数人も入れば一杯になってしまうような小さな店、それでも店内は柔らかな感じの雰囲気が見て取れる。
「グラツィエ!」
適当に多目のユーロ紙幣を渡してやり下車する。周りの道路が少しだけ高い位置にあって、半分地下に埋まっているような感じの店だ。一階部分は煉瓦、上はコンクリートで色合いがツートンカラーになっている。上の方が派手に塗られているのだが。
店内には簡単な絵柄でコーヒーとクロワッサンで七ユーロ、バーガーとシェイクなら十二ユーロ、ケーキとコーヒーなら十六ユーロといった感じで組み合わせがメニュー代わりになっていた。
「エスプレッソ、バーガー、ドゥーエ」
言えば出て来るだろうと、適当にそう二つ注文した。
「どうせなら可愛い子でもお供に指名したら良かったのでは?」
出て来たエスプレッソの香りを楽しんでから、チビっと口に含む。アサドの言うことは解らなくもない、もしロマノフスキーが供ならば、何故か同伴して目の前にいただろう。
「次からはそうするさ。今回は自由そのものを噛みしめたくてね」
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