イタリアの夜は突然に

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 建物と建物の間にある隙間に伏せた。何と通りに十数人の男が居て、サブマシンガンを撃ち合っているではないか。ローティーンの女の子を誘拐でもしているのか、抱えてセダンに乗り込んだ。それを援護するのと、追いかける集団とに分かれて右から左へと消えていく。 「治安維持はどうなってるんだ」 「さあ、賑やかで良いじゃないですか」  いくら何でもニュースになるだろう所業だ、遅れてパトカーがあちこちからやって来るが今頃来てももう遅い。怪我をした奴は居ても全て逃げ去った後。 「ちょっとした既視感があったんだが、アサドはどう思う?」 「一度は根を張っていたならば、恐らくはご想像の通りでしょう」 「やっぱりそうか」  追いかけて行った集団、ご丁寧に黒いスーツの上下で揃えていた、いわずと知れたエスコーラファミリーの姿だ。世の中にはいくつも似ている集団があるので確信するわけではないが、何と無くそうじゃなないかという感じはした。 ◇  五階建ての石造りの館、出入り口にはイタリア国旗とEUの旗が並べて掲揚されている。地方銀行かどこかの建物にも見えるようなこじんまりとしたこれが、イタリア政府庁舎だ。明治の頃に建てられた日本の郵便局と見た目が酷似している。  ファード・ハラウィはレバノン政府代表として軍事大臣の装いでイタリアにやって来ていた。スーツ姿で淡い茶色の髭を蓄えているので、老紳士と呼んでぴったりの雰囲気がある。
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