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「ロサ=マリアの兄ちゃんだよ」
「そうなの? お兄ちゃん?」
手を拡げて二人を抱きしめてやる。初めての顔合わせが唐突過ぎて言葉も出ない。
「あたしはレティシア・レヴァンティン・島だ。あんたは?」
「私は佐伯冴子です。龍之介君の奥さんですね」
「ああそうだ。こいつに子供がいたとはね」
別になんてことはないといった顔でチラッと見るだけだ。
「怒らないんですか?」
「なんでだ?」
「本人が知らないとはいえ、隠し子が居たようなものでしょ。それも妻との子よりも大きいって」
ロサ=マリアとは三歳か四歳位の差がありそうだ、レティシアはそう見積もった。
「女子供がいくらいようとも、あいつはあいつだ。別にヒステリックに叫ばなきゃいけないわけじゃないだろ」
ふっと笑う。子供同士が嬉しそうにしているのが大いなる理由だ。ロサ=マリア至上主義が今のレティシアを形作っている。
「そう言って貰えると心が楽になります。どうしても伝えられずに何年も……」
「それはあいつの不始末だ。女について妙にどんくさいところがある、孕ませたくせに全くなのはあたしも同じだったよ」
「えっ、奥さんなのに?」
「本気で気づいてないんだよあいつは。知ればああやって受け入れるくせにな。全く、どうしようもないやつだ」
口ではそう罵るも、視線には全く嫌悪感が無い。それは冴子にも伝わった。
「変わらないんですね龍之介君は」
「そうだね」腕組をして冴子の方を向くと「あんたとあたしは棒姉妹ってわけだ」
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