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 浩介が出社すると、早速後輩の坂井が出迎えた。 「大野さん、とうとうPureWorldデビューを果たしたんですね! おめでとうございます」  一足先にアプリに登録した彼から、毎日毎日「このアプリめっちゃいいっすね!」「すごい、なんか癒やされるわ、これ」「あ、さっき彼女できたんです。超かわいい」「デート行く時間なくてもデートできるって革命的じゃないっすか? 親世代じゃ考えられなかっただろうなあ」などと天然の宣伝を聞かされ続けたのだ。 「それで、気になる相手とかいました?」 「いや、まだそこまでは」 「結構アプローチありませんでした?」 「確かに、思ってた以上にあるな」 「なんか、嬉しいっすよね」 「そうだな」  坂井のタメ口にもイライラしない。これもPureWorldの効果だろうか。 「もしもアプリを使っていてわからないことがあれば、大先輩の堀川さんに聞けばいいっすよ。ね?」  離れた席に座っていた上司の堀川が顔を上げた。まもなく40代に入るが、10歳以上年が離れた浩介たちにもフレンドリーに接してくれる、上司の鑑だ。 「何でも教えてあげられるわよ。なんせサービス開始直後から使ってるから。もう10年になるかな」 「そういえば、堀川さんの赤ちゃんってもうすぐ生まれるんですよね」 「そう。いま8ヶ月かな。いよいよ3児の母になるわけ。これからもっと稼がないと」  そう嬉しそうに話す堀川のお腹には、膨らみはまったくない。人工子宮を利用しているからだ。
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