七夕によく似た呪詛

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七夕によく似た呪詛

ドアは開けなくていいですから、そのまま聞いてください。突然ですが、七送りという儀式があるのをご存じでしょうかね。 これは、 県  町に古くから伝わる呪詛のようなもので、七送りというのは、単に私個人が勝手にそう呼んでいるだけでなんですが、今日町を歩いている時に、運よくそれらしきものを見つけることが出来まして。 私ですか? 私は、ただのその手のものが好きなだけの一般人ですよ。でも、そういうものって一生に一度は見てみたいと思いませんか? 誰かが、誰かを呪っているところをです。 場所は、  駅前のアーケードです。七送りを行うには、人通りが多くて、尚且つ人々の意識が集中している場所の方が好都合だと聞きますから、ぴったりな場所だったんです。七夕に限らず、神社の絵馬とかおみくじとか、そういうもののフリをしていることもあるみたいですよ。 すみません。話を戻します。まあ、見た目は普通の短冊ですよ。折り紙や和紙なんかを長方形に切って、それを笹の枝に括るんです。 違う点といえば、血文字で書かれていることくらいでしょうか。と言っても、よく見なきゃわからないですよ。あっ、書いてある内容もね、ちょっと違う。普通は願い事を真ん中に書いて、その脇に自分の名前を書きますよね。でも、七送りの場合は、呪う相手の名前を真ん中に書いて、その脇にじ……いや、やっぱり言わないでおきます。私自身、何が起こるかわからないので。もし失敗でもしたら、せっかくの努力が水の泡です。 そうして、逆さまにして括りつけます。はい。逆さまです。逆さまにすることが重要なんです。 呪われた相手はどうなるかというと、私の知る限りでは、7月8日を迎える前に、何らかの形で亡くなりますね。ああ待って、まだ、そこにいますよね? 良かった。ここからが大事なんです。 その呪いの短冊を私は見つけたわけなんですが、そこに書かれていた名前がですね、あなたの名前だったんですよ。あなた、      さんですよね。間違いないですよね? この短時間で名前から住所を割り出すのは、慣れているとはいえ、骨が折れました。あなたのことを呪い殺そうとしている相手がいるんです。この町に。それを先に言えって感じですよね。でも、物事には順序というものがありますから。飛ばしたらまずい順序です。 でも大丈夫。ちゃんと、解き方はあります。 まず、その短冊を逆向きに括り直します。そして、そこに書かれたあなたの名前を、鏡文字にして書き直してください。血文字じゃなくても大丈夫です。たぶん。まあ、詳しいことは向こうに行ってから説明します。まずは、その短冊がある場所まで一緒に行かなければなりません。本人がいなきゃ意味がないんです。今夜の9時50分なので、もう時間がありません。だから ここ、開けてくれますか? あんしんしてください。ちゃんと、あなたを送りますので。ここをあけて。
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