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きっと広沢くんは、ちょっとふざけて手を出してみただけだろうし。 私はもっと冷静にそれを交わすべきだった。 それなのに、部下相手に何を意識しすぎているんだろう。 微妙な距離をとって向き合う私たちの間に、気まずい空気が流れる。 広沢くんに何かうまい言葉をかけなければ。 自分のとってしまった行動に激しく後悔しながら必死に考えていると、彼が私を見つめてきゅっと口角を引き上げた。 「さりげなく手を繋ぐ作戦だったのに、今回はバレちゃいましたね」 広沢くんが冗談交じりに笑う。 彼が言う「今回」が、昨日のことを踏まえての言葉だと気付いてほんの少し胸が騒いだ。 「さりげなくも何も。私たちに手を繋いで歩く理由なんてないじゃない」 「いいじゃないですか。デートなんだし」 「何度も言うけど、これは昨日いろいろお世話になった『お礼』だから」 「わかってます」 突き放すようにそう言うと、広沢くんが笑いながらも少し切なげに目を細めた。その表情に、ドキリとする。 「行きましょう。ロープーウェイ」 複雑な想いを抱えて立ち止まる私に、広沢くんが明るく笑いかけてくる。 なんとも言えない苦い感情が胸に湧き上がってくるのを感じながらも小さく頷くと、先を歩いていく彼の背中を追った。
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