514人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
「なぁ。秦野さん、今日も碓氷さんに泣かされてたんだろ」
「碓氷さんて、何かと秦野さんにしつこく絡んでるよな」
昼休みが終わる頃。休憩室に置いてある自動販売機でお茶を買おうとしていたら、奥のほうから先客たちの噂話が聞こえてきた。
「若くて綺麗で、男にも人気のある秦野さんのこと妬んでんじゃない?」
そのまま立ち去ろうかと思ったけれど、彼らの噂話があまりに見当違いな方向に進んでいくから、腕を組んで眉を顰めた。
このまま何食わぬ顔で、彼らのところに乗り込んでやろうか。
そうすればきっと、全員が一瞬にして青ざめるに違いない。
「でもさー、なぜか広沢は碓氷さんに気に入られてるよな」
唇の端を引き上げて苦笑いを浮かべたとき、今度は別の誰かをからかうような声が聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!