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「いいじゃん。碓氷さんってあんまり笑わないし、キツめの顔してるけど、美人だし。まぁ俺は、守ってあげたくなるような秦野さんのほうがタイプだけど」
顔の見えない相手の勝手な言いがかりに、心底うんざりとする。
どうして、企画書を一発で通したくらいで私が広沢くんに気があることになるんだ。
突き返すことなく一発で通したのは、彼の企画書に非がなかったから。それだけのことなのに。
頭を抱えて壁にもたれていると、今度は広沢くんの声がした。
「お前の好みなんてどうでもいいよ」
「じゃぁ碓氷さんのことは?」
「俺、2つ以上年上な女には興味ない」
「あー、残念。碓氷さん、失恋じゃん」
顔の見えない別の誰かがふざけて煽る。
どうして、恋してもない相手に失恋しなくちゃならないのよ。
ため息を零すと、私はついに彼らのいる休憩室に自ら乗り込むことにした。
何食わぬ顔で中に入って、自動販売機にコインを入れる。
休憩室にいたのは、広沢くん含めて3人。
私の顔を見た瞬間、広沢くん以外のふたりの顔が血の気を失って凍りついたのがなんとも言えず可笑しかった。
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