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服作りが好きな家の娘メリアと細工が得意な家の息子レズリーはとても仲が良く、毎日一緒に遊んでいました。村の広場で鬼ごっこをしたり、料理上手なレズリーの母のところでお菓子作りをしたり、少し離れたクローバーとタンポポが咲き乱れる野原にピクニックに行ったり、互いの小さな手仕事を見せ合ったり。メリアの母は幼い頃に亡くなっており、レズリーの母はそれもあって自分の娘のように接してくれメリアは寂しいと思うことなく日々を過ごしていました。
「今日は何をする?」
「ピクニックに行きましょう! クローバーが満開なのよ!」
「そう言う気がしてた。母さんがおやつのアップルパイを焼いてくれてるから、持って行こう」
「すてき!」
2人は小さなバスケットにアップルパイとハーブティーを入れてキャアキャア歓声をあげながら野原まで駆けていった。道の途中で甘い香りが漂いだす。クローバーの花の香りだ。野原が見えた。真っ白い花の間にポッコリと黄色い花の株がある。一面のクローバーとアクセントのように固まって存在を主張するタンポポたち。ここが2人の大好きな場所だ。
でんぐりがえっても痛くないし、ぶんぶん飛んでくる蜂も丸々と太ってもふもふしていて可愛い。何もしなければ刺さないと知っているから怖がることもない。寝転がって見上げる青空はとても綺麗で、顔の上で揺れる花を見ていると自分が小人になったような不思議な気分になる。
「きれいねぇ……」
「うん」
レズリーは隣に座ってうっとりとしているメリアの髪がふわふわと風に吹かれているのを見て目を細めた。よいしょっと起き上がり、手近な花を手折る。花とみつばの葉っぱを組み合わせて編んでいく。やがてきれいな輪になると満足げに頷いてメリアの頭にそっと落とした。幸せを祈る花冠。
「ありがとう、レズリー」
「ん、似合うよ」
「お姫様みたい?」
「うん」
素朴な生成り色のワンピースにメリアのピンクがかった優しい色の髪。そこに加えられた花冠はメリアの可愛らしさを一段と強める。レズリーは世界一クローバが似合うのはメリアだと思っている。
「ねぇ、レズリー」
「なぁに、メリア」
「私、結婚する時のドレスはクローバーがいいな」
「けっ……さすがに早くない?」
「いいじゃない。レズリー作ってよ」
「僕の家、細工師なんだけど……まぁ、メリア裁縫苦手だもんね」
「もう! レズリーの意地悪!」
「ごめん、ごめんってば」
膨れっ面でポカポカと叩いてくるメリアに謝り、すばやくミニブーケを作り差し出す。真ん中に1本タンポポを入れて可愛らしく。
「……これに免じて、許してあげる」
「光栄です、メリア様」
真面目くさった顔でそんなやり取りをして、堪えきれなくなったように笑い出す。笑い声はいつまでも野原に響いていた。
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