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美音とは逆に、僕は相当頑張ってこの学校に入った。でも無理はよくないね。理数系が壊滅的にアウトなのが早々に判明し、着いてくだけで精一杯。都合のいい夢ばかり見るのは現実逃避なのかも。
それでも僕は、変な夢が楽しみになってきてるんだ。さて今夜は……
期待して寝たら、今夜の夢が一番変だった。なんと美音が初登場の激レアドリーミング。しかも泣きそうじゃないか?
「景太、私あなたに酷いこと……」
「普段以上に?」
「あなたに……呪いをかけてるの。今この夢で」
僕は最近、夢を夢と認識する能力が開発され始めている。この時も夢とわかったのでからかう余裕があった。
「呪い?人形に襲われたり、同じ時間を繰り返すやつ?」
「全然違います。これはね……」
妙にリアリティある表情と口調。
「景太が誰かに『好き』って告白すると、その相手が景太のことを忘れてしまう呪いなの」
ちょっとややこしいが、命に関わるものではない。
「忘れる?告白を?」
「景太に関する記憶が全部消えて、初対面みたいになると思う」
いややっぱダメだキツイ。人間ってのは程度の大小こそあれ承認欲求の塊だ。知人、まして好きな人に存在ごと忘れられればクリティカルダメージを負うだろう。
だが待て。僕は非モテで、誰かを勝手に好きになる身の程知らずでもない。事実上問題ないぞ。
「別にいいよ。メガネヲタクの恋愛なんて都市伝説だし」
「わかんないでしょ!景太にす、好きな人ができたら大変なことに」
「ないない。至高は虹にこそ存在し得るもので、惨事に興味ないから」
美音はしばらく俯いていたが、顔を上げると怒っていた。
「何よバカ!せっかく忠告してるのに!知らない!」
「呪っておいて忠告って、ヴィランのやり口だぞ」
「ふん!ベーだ!メガネヲタク!」
「だからそう言ってんだろ、あっ待て!」
夢ってやつは、いつも解決する直前に目が覚めるんだ。
その朝。夢なのに後味が悪い上、美音はいつもの元気がない。リアルで喧嘩したわけではないが、少しの間なんとなく距離ができてしまった。
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