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数日後。帰ろうと玄関に行くと美音がいた。幼馴染だから家も近所。タイミングが合えば揃って登下校するのは日常だが、今日は久しぶりだ。様子も気になってたしちょうどいい。
「美音、最近元気ないね?」
「うんありがと、体は大丈夫だよ」
マシンガン無駄トークが炸裂しない。やはり変だ。
「あの、さ。景太、最近変な夢を見るって言ってたよね」
「アホすぎて3日くらいで忘れるけどね」
「そう?私の夢なんて見ることある?」
あるも何も、気がかりはまさにそれ。美音の呪いの夢だ。
「……あった」
「いつ?ねえいつ?」
美音が前のめりになる。
「先週」
「ひょっとして火曜日?」
「そうだ。学食カレーの日だった」
「私、変なこと言ってたでしょ」
ああ。夢でそりゃあ変なことを言っていた。だがそれすら遥かに超えて変なのは、現実の美音がその夢の話をしているという事実だ。
「うん。変だった」
「やっぱり……ごめんね」
美音のつぶらな瞳から涙があふれる。焦るわ。
「ちょ、さっきから何を?」
「夢でね、呪いをかけちゃったの」
呪いというワードで、決定的に夢と現実がシンクロする。クラッと来た。あり得ない。
「僕が告白すると相手が僕を忘れる?」
「そう」
「いやいや突っ込みどころ満載で、落ち着こう、ははは……」
美音は顔を抑えてすすり泣いている。なんてことだ。ガチだと言うのか。
「本当なの?」
「私も最近変な夢を見ることが増えたの。その時は景太と同時に同じ夢を見たはず。私が内容を知ってることが証拠」
キツイ悪戯が好きな美音だが、誰かを傷つける嘘はつかない。
「これじゃ景太、恋愛できないよね」
「解く方法は?」
美音は小さな口を半開きにし、精一杯「わからない」と呟く。「念のため誰にも告白しないで」と釘を刺され、僕らは互いの家の手前の三叉路で別れた。
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