永遠におやすみ

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大丈夫…。 ぐっすり寝ているわ。 だって、スープに入れた睡眠薬は かなりの量だったもの。 この日のためにずっと準備してきたんだから。 今日こそ、義雄から自由になる…! 振動を起こさないように 夕子はベッドからそっと起き上がった。 隣にはガーガーといびきをかきながら 眠りこける夫の姿。 その手に、ゴツい足に、 何度殴られたり蹴られたりしたことか。 逃げ出しても必ず追って来られて、捕まって、 その度にもう死ぬんじゃないかと 思うくらい殴られた。 このままでは私は夫に殺される…。 その前に逃げなければ。 でも。ただ逃げるだけではまた捕まってしまう。 だから…この人を殺すと決めた。 生きるために。 夕子はベッドの下から用意していた カバンと上着を出すと、そっと部屋を出た。 ダイニングの大きなテーブルを 寝室の前に持ってきて 扉が容易に開かないようにする。 今夜は外灯を付けないようにしておいた。 夕子は懐中電灯を持って外に出ると、 裏庭の物置に貯めておいた小枝の束を取り出し、 家の周りを囲むように置く。 夕子は上着を着込み、 玄関のドアに鍵をかけた。 外は冷たい風が吹いていたが、 不思議と寒くはなかった。 この風が…私にきっと味方してくれる。 裏庭の隅に置いた赤いタンクを手に持ち、 家を囲む小枝に向かって中のガソリンを ゆっくりと撒いていく。 義雄のお気に入りのジッポを上着のポケットから 取り出して火を灯した。 ジッポを小枝のそばに置くと、 オレンジの炎がふわりと広がっていく。 なんだか、きれいだと思った。 「おやすみなさい、あなた」 自分でも驚くほど冷たい声が出た。 そして、不思議と笑みがこぼれた。 そのまま夕子は振り返ることもなく家を後にした。 背中が炎のせいか少し暖かく感じた。
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