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3. 友人
「ふーん、それで私の連絡には、全く応答無かったのね。あーあ、休日中メッセージには既読付かないし、メールしても音沙汰無くて、これでもかなり心配したんだけどなー」
心配して損したー、と、わざとらしくも冷やかさと不機嫌さとを前面に出す目の前の親友に、私はただただ平伏するのみ。
「返す言葉もないです。ホントにゴメン」
イチとの偶然の再会から一日経ったお昼時。今、私は大学近くのカフェで、高校からの親友である須崎 和葉と一緒に、ランチと言う名の反省会を展開している。
昨日、電話で私の生存を確認した和葉は、別件でたまたま車で近くにいるからと、あの後顔だけ見に来てくれた――余談だけど、美術館敷地正門前に横付けされた青い外国車、そしてその運転の格好良かったこと。
本当に時間がなかったようで、運転席のウインドウを下げて私の顔を確認した和葉は、「顔が見られて良かった、詳しくは明日大学で聞く!」と言い残して、来た時と同様、風のように去っていった。
そして今日、二コマ目が互いに休講だったことを幸いに、昼前からここに陣取り、私は休日中の事の顛末を洗いざらい喋り、和葉から本人曰く「愛のあるお叱り」を受けつつ、今に至る。
和葉は、私が昨日までの休日にバイトを入れていなかった理由を憶えていた。そう、元々は彼の誕生日が休みと重なっていたから、二人で過ごそうとかなり以前から空けていたのだ。
その記憶を、私は諸々とともに消し去り、消し忘れていたアラームに傷付き、和葉の連絡をことごとく無視し、それで和葉は色々と気を揉んでいたらしい。
一方の私は、連絡を放置したまま美術館でイチと再会し、素晴らしい絵画に出逢い、
「ま、絵を見て気持ちを立て直すなんて零らしいし、美術館通いが再開できたところは喜ばしいことだけど」
「うん、確かに。お陰様で大丈夫。心配かけました」
ふっと笑みをこぼす親友に、完全に同意する。
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