3. 友人

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 午後の授業に間に合うように店を出て、爽やかな晴天の下を和葉(かずは)と歩く。  唐突に、和葉が切り出した。 「でも昨日の電話、折角の(れい)の時間を邪魔したのは悪かったわ」 「邪魔? されてないよ、交流展からはもう出ていたんだし」 「……そっちじゃなくて。イチさんとの再会に水を差したな、と。今更だけど」  あぁそっち、と返すと、和葉が半ば呆れた顔をする。 「大丈夫、多分また会うから」  我ながら、なんだか言い訳めいたセリフだ。 「それなら良いけど……って、零、多分て何? ちゃんと連絡先とか聞いたの?」 「こっちの電話番号教えた。向こうから連絡するって言ってたよ」 「……私、イチさんに会う機会あったら全力で謝罪するわ。五年以上かけたのに、零の希薄なコミュニケーションの改善に至らず申し訳ないって」  またしても芝居がかった仕草で、和葉が顔を手で覆う。 「えー、これでも和葉のおかげで改善されてるよ。高校の時よりマシでしょ? メッセージアプリも使うようになったし。大体、イチとは携帯持つ前からの仲で、改めて連絡先交換って、なんかピンとこなくて」  昨日も、去り際にイチが電話番号を聞いてくれたから伝えたようなものだ。イチと連絡先を交換するという行為は、私の意識からはすっぽり抜け落ちていたのが実情だったりする。 「そうね、確かにマシになってる。ただ、もう少しアプリの確認頻度を上げてくれれば、おねーさまは嬉しいわ」  和葉の灰色の瞳が輝いた。  しまった、このまま反省会に立ち戻りそうな雰囲気……。  と思ったけれど、それは杞憂に終わった。  和葉とは所属学部が異なるので、普段は違う建屋にいる。そのちょうど分かれ道になる大学構内の十字路の手前、佇んでいたもう一人の友人が、声をかけてきたのだ。 「やっほー、お二人さん!」  私達を待っていたのは、和葉の学部の友達で、私とは一時期在籍していたサークルが縁で仲良くなった、内原(うちはら) 桃香(ももか)だった。
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