1. 失恋

2/3
前へ
/178ページ
次へ
 連絡を送ってすぐ、こっちからの連絡は拒否指定にしたらしい。携帯は繋がらなかった。インターネット上の繋がりは、向こうがあらゆるアカウントを削除したことで途切れた。  こんなに簡単に切れてしまう関係だったのだと、今更のように思い知らされた。  別に、これが初めての「お付き合い」だったわけじゃない。とはいえ、彼氏彼女の関係なんて片手で数えられる程度の経験しかない上に、自分の気持ちがまだ残〜話題に花を咲かせた。  日々過ぎていく中で、失恋は過去のものとなった、かに思えた。  そんなある日――  スマートフォンのカレンダー機能が、彼の誕生日を告げた。  完璧な、消し忘れだった。  アラームと表示に気付いた瞬間、胸に穴が空いた。  解除するまで鳴動を繰り返すスマホを、震える指で操作するのがやっとだった。その間に、胸の虚ろは全身に広がって、私は動けなくなった。  私の感情は、ちっとも元に戻ってなかった。
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加