2. 再会

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 そんな思いが顔に出てたのか、イチがクスクス笑ってこちらを覗き込む。 「大丈夫、不審者っぽいとかじゃないから心配するな。半分は賭けみたいなものさ。間違ってなくて良かった」  イタズラっぽいその表情にも、年齢分の精悍さや端正さを差し引けば、確かに子供時代の面影が色濃く現れていた。  半分賭け……。石橋をこれでもかと叩く安定志向だった子供時代のイチからは、全く想像できない台詞に、私は目を丸くした。 「その大胆さに今回は感謝かな。会えるなんて思ってもみなかったよ」 「俺も。向こうの交流展見に来たんだけど、この時間にして正解だった。元気だったか?」  おいそれとお目にかかれないような美しい顔に浮かぶ涼やかな微笑みと、再会を喜ぶ言葉に、自然と笑顔になった私は反射的に大きく頷いた。 「もちろん! 実は、久々にここに来たんだ。でもあの行列で、別のところに行こうか考えてたの。あの交流展の方も開催中なの?」 「ああ、今日が初日」  そこで何かを閃いたように、イチが一旦言葉を切った。 「――行こうぜ、絵、見に」  きょとんとイチを見上げる私の視線と、にっと笑って私を見下ろすイチの視線が交わる。  その笑みに、昔と視線の高さは違うけれど、やっていることは同じだと気が付いた。  イチと私、どちらかが相手を美術館に誘う時の決まり文句。  ――暇? 美術館行こう。絵、見に。  私は思わず吹き出した。 「何、その懐古趣味な発言」 「記憶力が良いと言ってくれ」  片眉だけ器用に持ち上げて言うイチがおかしくて、私はまた笑う。 「良いわ、行きましょ」  再会したばかりの幼馴染と自然に歩調を合わせて、私は交流展に向かった。  建屋までの小径は、お喋りが尽きなかった。 「いつ、日本に帰ってきたの? おじさんやおばさんは元気?」 「実はごく最近。向こうはそれなりに元気じゃねえの? 親父はアメリカ、お袋は確か今はドイツ」
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