2. 再会

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「そういうお前のところは?」 「うちもバラバラ。私の大学進学と同時期にお父さんのイギリス赴任が決まって、お母さんは同行。兄さんは、今どこにいるんだろうねぇ」 「類は友を呼ぶというか、みんな自由だな」 「イチだって。帰国がごく最近って、大学は?」 「うん、まあそこは話すと長いし、今度にしようぜ。もう着いたし」  確かに、あっという間に交流展の開催されている建屋前に着いていた。  建物入口の重厚な扉を先に開けたのはイチだった。そのまま、先に入るように身振りで促してくる。 「あ、ありがとう?」  流れるようなエスコートに戸惑い、思わず語尾が上がる。 「どういたしまして?」  小声で返されたイチの語尾も上がっていたのは、ワザとに違いない。  静かな館内に、人は本当にまばらだった。ロビー右側の、受付と書かれた紙が垂れ下がる事務机には、記帳ノートと目録、そして寄付金を入れるボックスがあるだけで、係の人もいない。  お金をいくらか入れて、記帳し、手に取った目録を確認する。  会場は、この先の一階中央の大部屋と、そこに繋がるいくつかの小部屋で、特に順路は定められていない。かなり自由な空間だ。  そこへ、荷物を貸ロッカーに入れて手ぶらになったイチがやって来た。 「好きに見て回ろうぜ。何かあったら声かけるから」  かつて私が鑑賞に没頭したら、一緒に来た相手を忘れがちになっていたことを、イチは忘れていなかったらしい。でも、約十年ぶりの再会なのに……。  目が口ほどに物を言ったのかは不明だけれど、イチは無言の私の肩を軽く叩き、 「気にすんな、俺も見たい作品あるんだ」  その手をひらひら振って歩き出した。  そうか、自由にして良いんだ。  それだけで、なんだか心だけでなく体も浮き立つような気になってくる。  目立つ長身の後ろ姿に感謝して、私はイチとは別方向につま先を向けた。作品に近づくにつれて、自ずと気分が高揚する。  そこからは、久し振りの美術鑑賞に文字通り没頭した。
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