デートのお誘い

1/3
138人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

デートのお誘い

新年二日目、ユーインは少しドキドキしながら待ち合わせ場所にきていた。それというのもリーから、ランチのお誘いがあったのだ。  年末の女装大会で仲直りがしたい旨は伝えた。その際リーはランチに誘ってくれると言っていたのだが、昨日早速誘われたのだ。  凄く展開が早くて心の準備ができていない。格好は可笑しくないか、なんだか不安になってくる。細身のズボンに白シャツ、それにキャラメル色のカーディガンを着て、上に薄手のグレーのコートを着ている。寒いのは苦手だ。でもこれも変ではないだろうか。コリーは大丈夫と言ってくれたけれど。  不安いっぱいになって心臓がずっとドキドキしていて目が回りそう。そんなユーインの横合いから、わりと近い距離で声が掛かった。 「お待たせ、ユーイン」 「ひゃい!」  思わず高い変な声が出て飛び上がってしまう。それだけでも恥ずかしくて顔を上げられないのに、その人はとてもかっこよかった。  黒の細身のズボンに、白いVネックのシャツが逞しい体にとても似合っている。それに黒いロングコートを着たリーはシンプルなのにとてもオシャレに見える。  こんなに素敵な人の隣に自分が立っていいのだろうか。そう思うとユーインの顔は自然と下を向いてしまう。嫌いな癖の一つだ。 「どうした?」 「あの、リーさんがその、かっこよくて」 「ん? ははっ、照れるな。ユーインも可愛いと思うぞ」 「かわ、いい?」  おずおずと顔を上げる先で、リーはにっこりとお日様のように笑って頷いた。 「可愛いと思う。ユーインは派手な色味よりも柔らかい色が似合うと思う」 「ほん、とう?」 「あぁ」  良かった。素直にそんな言葉が出てくる。  リーの手がゆっくりと伸びて、俯いている顔を上げさせた。そしてとても優しい目でユーインを見つめた。 「メシの前に、ちょっと店に寄らないか?」 「え? あっ、はい」  何処に行くのか分からないまま、リーの大きな手がユーインの手を包み込む。冷たかった手がゆっくりと、彼の温もりで温まっていった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!