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それから何回かお話しただけ。好きになるには充分だった。 進展があったのはその後。 カウンターに座る彼の横にそっと座って、お互い、1杯目を飲み終わった所で承和さんが息を吸う。 「・・・初めてここに来たときから、海棠君のこと気になってたんだ。 びしょびしょになった君に優しくしたのは下心。チャンスだと思ったんだ、ごめんね。」 なんて綺麗に謝る人なんだと思った。 少し下を向いた、下がったまつげにどうしても触れたくなった。 「・・・僕は、あの時、お酒かけられて、良かったと思えるくらいには、貴方との時間が好きです。 承和さん、もし、まだ、下心あったら、僕と・・・付き合ってくれますか?」 僕は真っ直ぐ、承和さんの目を見た。 「本当に?」 「はい」 「嬉しい。 俺はね、海棠君のそういう気遣いができて優しいところ好き。 告白だって俺がすれば良いのに、気を病めるの覚悟して言ってくれたんでしょ? ・・・あと、その小さい口が好き。変態っぽい?」 僕の首に手を這わせて、承和さんは嬉しそうに目を細めた。その表情に僕はキュンとした。 「嬉しいです。そんな事言われたことないから。 僕も、あなたの優しい所と、・・・まつげが好きです。」 「まつげ?ふふっ、触って良いよ。あ、2人席行こうか。」 優しく笑って伏せる目が僕の胸をさらに高鳴らせる。 承和さんは僕を自然にエスコートする。 カウンター席の椅子とは違う、ソファの柔らかさに体を沈めた。 「・・・ん。どーぞ。」 承和さんは目をつむる。 「綺麗・・・。」 僕はそっと触れた。 承和さんは少しだけくすぐったそうに声をもらした。 「今度は俺が触って良い?」 「ん!」 僕はギュッと目をつむる。 触られるのは口なのに・・・。 緊張で体がこわばる。 「・・・あのさ。今から俺の家、来ない?」 「え?」 自分でもわかるくらい情けない声が出る。 「・・・キス、したくて。」 少し顔を赤らめる承和さんは、更に綺麗だった。 「僕も・・・したい。」 「ん。行こう。」 承和さんの大きな手が僕の手を優しく包み込む。
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