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もう絶対あなたの隣には並べないと思っていた。だから、わたしは今込み上げる歓喜に胸が潰れそうなほど苦しい。でもそれが心地いいなんて、ほんと贅沢。
「素敵な新郎様ですね」
「そうなんです、本当に素敵な人で、わたしにはもったいないくらい」
挙式は大安の今日。
ジューンブライドなんて、女性の誰もが憧れるだろう。
男の人には大したことではない些細なことだろうけれど、鳳牙はそんな私の気持ちを知っていたかのように6月の挙式を提案してくれた。私が進言したんじゃないよ?鳳牙自らそうして申し出てくれたの。
手慣れた所作で、スタイリストさんは私の髪を櫛で梳き、26ミリのコテでランダムに巻き上げてくれる。半透明のチューブを取り出して、手のひらに出しゆっくり髪に馴染ませてくれる。それは何ですかと聞いたら、トリートメントだって。
途端に私の髪はふわり、と品の良い優しい花の匂い。きつすぎないその香りは、鳳牙の好きな匂いだ。
「きっと、新郎様も喜んでくださいますね」
「だといいんですけど」
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