優しい牙をつきたてて

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 いとが楽しそうにスタイリストの人と話す声が聞こえた。  それを聞いて思わず安堵する。ああ、よかった。またこうしていとの笑顔が見られることが何より幸せだった。そう、それだけで十分だ。  「優牙……、本当にいいの?」  落ち着いたデザインの黒留め袖を身に纏い、母さんが俺のもとにやってきた。その後ろには不安げな、でもどこか安心しているような顔をしたいとのご両親。俺はそれを見て、笑顔を作った。  「いいんだ、いとのそばにいたいから」  そう言った俺の言葉に、一番後ろにいて姿が見えなかった父さんが身を乗り出して前に来ると口を開いた。   「結婚は、情でするもんじゃないんだぞ」 寡黙な父さんらしくなく、その目は心配そうに俺をみていた。ああ、もう。父さんがそんな顔するなよ。  「いとのそばにいることが、俺の幸せだから」  「だが、いとちゃんは……」
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