パリの中心で叫びます

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「……テオはわからない? オーギュが人間と一緒に暮らしているっていう意味が」  問われてもよくわからなかった。 「オーギュはあの子に、自分の命を預けたんだよ」 「えっ? どういうこと?」 「あの子が殺そうと思えば、いつだってオーギュを殺せるってこと。だからオーギュはあの子が絶対裏切らないって心から信じて――命を預けるつもりで、自分の正体を明かしたんだよ」  そこまで説明されてようやく理解する。そうか、だからミカはあの男が「人間」といることにショックを受けたんだ。 「オーギュ、幸せそうだった。いつもはあんなふうに笑ったりしないんだ」  これでよかったのだと自分を納得させるように、ミカは弱々しく笑った。  慰めてやりたくて、頭を左右に振りミカの小さな頭に擦りつける。 「……それならミカだって同じだろ」 「え? 何が?」 「俺と一緒に暮らしてるんだから、俺に命を預けてるようなもんだろ」  そう言うと、ミカが、ええーっ?と声を裏返す。その声にいつもの明るさが戻り、心の中で安堵した。 「預けたつもりはなかったんだけどな! 命は助けてもらったけど」 「つまり俺もいつだってミカを殺せるってことだな。こんど生意気なことを言ったら、ミカが寝ているうちに太陽の下にポイっと放り投げて――」 「ちょ、ちょっと冗談にならないから! 絶対やらないでよね! 試すのもダメだから!」  焦るミカが可愛くて、声を上げて笑った。 「やらないよ。絶対ミカにそんなことしない。誓うよ」
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