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俺がそれをさいしょに切り出したとき、当然ミカは猛反対をした。ヴァンパイアとして生きるのはそれほど楽なことじゃない、人間のままで十分だと、ミカは必死で俺を止めようとした。
でも俺が、ミカと同じ時間を生きていきたいと言った。
俺の人生に必要なものは、大切な人と少しの画材だけ。それならばヴァンパイアになっても十分叶えられる。
ミカは俺の血を限界まで吸い取り、代わりに自分の血を俺に吸わせた。そうして数日眠った後に目覚めると、俺の身体はヴァンパイアに生まれ変わっていた。
鏡を見ると、黒かった瞳が鮮やかなサファイア色へ変化している。ミカと同じ瞳の色だ。肌も透き通るように白く、毛穴はいったいどこへ行ったのやらという感じだ。どうやらヴァンパイアになると、見た目も数倍美化されるらしい。
俺の顔からだらしなさがすっかり消えた。正直言って、これだけでもヴァンパイアになった甲斐がある。
これから俺たちは、長い長い、永遠の旅に出る。ふたりきり、この世の時間から飛び出して。
「どこに行きたい? 王子様」
尋ねると、ミカは背伸びをして俺に耳打ちした。
「ふたりなら、世界の果てまで」
俺の愛しの小さなコウモリ。永遠に、飽きるほど、可愛がってやろう。
旅行鞄を持ち上げ、黒いマントをコウモリの羽のように翻す。もう片方の腕で、その小さな身体を抱き上げた。
その瞬間、
俺たちの姿はモンマルトルの夜から消えた。
〈Fin〉
本編はこれで終わりです\(*^▽^*)/
みなさま、お付き合いいただき大変ありがとうございましたー!
明日からはおまけとして、〈ミカがパリの中心で愛を叫んだ夜の、甘〜いお仕置き〉が続きます♡
ちょっとえっちなので読みたい方だけどうぞ(✿´ ꒳ ` )
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