〈おまけ〉パリの中心で愛を叫んだ夜の、甘〜いお仕置き

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 テオは自覚がないようだけど、けっこう女にモテる。  ちょっとだらしなくて、隙があって、ダメな感じが母性をくすぐるんだと思う。  テオはときどき仕事場から、客にもらったのだという差し入れを持ち帰ってくる。ちょっといいチョコレートとか、ワインとか、煙草とか。それに小さな紙切れが挟まっていて、〈ふたりで飲みにいこ〉とか〈家に遊びに来て〉とか〈ごはん作ってあげる〉とか、女の文字で色っぽいお誘い文句が書いてある。ときどき上着のポケットにも入ってる。  テオが気づく前に、ぜんぶ僕が捨ててやった!(えっへん)  テオがあの手この手で籠絡されて、家に帰ってこなかったら嫌だもん。  こんどは前からテオに抱きついて、甘えるようにじいっと見上げた。テオは二杯目の水を飲みながら、僕の頭をがしがし撫で回す。その骨張った大きな手も好き。 「……ミカは、いつもすっぽんぽんだなぁ」  目尻がだらしなく下がって、大きめの口が、にいっと横に伸びる。その笑い方も好き。大好き。  空になったコップをテーブルに置く。僕の両脇に手を差し込んで抱き上げ、ベッドに放り投げた。僕の身体が古いベッドをきしませながら上下に跳ねた。 「よし、お仕置きをはじめるか」  お仕置きって、何の!?  テオがベッドに膝をつくと、ぎい、と音を立て斜めに傾いだ。  僕よりずっと大きな身体。広い肩幅。筋肉質な太い腕。いつもどれほど僕がドキドキしてるか、きっとテオは知らない。
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