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意味がわからずぽかんとすると、テオが僕の口元に自分の肩を寄せた。
「ねえ、ミカ。吸って」
「えっ? いま?」
「うん。俺、ミカに血を吸われるの好き」
そう言いながら、わざと僕の中で動き出す。
「……あっ、ちょっと……テオっ……」
「早く吸って」
頑張って刃を立てようとするのに、顎に力が入らない。甘く、痺れるような感覚に、全身の力を持っていかれる。
「……やっ……あんっ、……待って、もうっ……」
「好きなだけ吸っていいから。早く」
そう言いながら、どんどん動きが激しくなる。目が眩むような快感に押し流され、テオの首にしがみつくので精一杯。
「んんっ……そんなっ、動くと……吸えなっ、んやぁっ……、あぁん……ちょっ、……もっ、いじわる!」
「ごめんね。わざと意地悪した」
目尻に溜まった涙を、テオがぺろりと舐める。
「しょっぱい」
そう言って、悪戯な顔で笑う。その目尻の皺も好き。大好き。
「やっぱり僕、ヴァンパイアになってよかった」
テオが指の甲で優しく僕の額を撫でる。
「あのまま人生が終わっていたら、こんなに幸せな気持ち、きっと一生出会えなかったもん」
その労わるような指の感触を、ぼんやりとした記憶の中に思い出す。馬車にぶつかって気を失ったあの日、夢の中でこんなふうに誰かが優しく、僕の身体を撫でていてくれた。
「……ミカはときどき、すごく素敵なことを言うね」
「ずっとこうやって可愛がってくれたら、きっと毎晩素敵なことを言えると思うよ」
僕がそう言うとテオは、身体が溶けてしまいそうな甘い言葉を囁きながら、星の数ほどのキスを僕に降らせた。たぶん、これからも、ずっと。
〈ほんとうのFin〉
この度は最後までお付き合いいただきありがとうございました\(*^▽^*)/次回があるかどうかわかりませんが、またどこかでお会いできると嬉しいです♡ 鹿森
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