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第1話
教会のチャペルの扉が開き、私はバージンロードへと一歩を踏み出す。
一年前の今日、大好きだった彼と別れた。あの頃はこんな形で自分がバージンロードを歩くことになるとは夢にも思わなかった…
厳かなパイプオルガンの調べがチャペル内に響き渡る。バージンロードを歩く私の隣には、大切なたった一人の家族の姿。組んだ腕からは温もりと、そして緊張が伝わってくる。
『そんなに緊張しなくても大丈夫だよ』と言ってあげたいが、かく言う私も右足と左足が一緒に出そうなぐらいに緊張している。
一歩また一歩と進む度に、ウェディングドレスの裾がふわりと翻り揺れた。
今日の日を迎えるまでは本当に大変だった、そう思い返すと感動で瞳が潤み涙で視界が歪む。
だがまだ泣くわけにはいかない、私、川上真央(29歳)には使命があるからだ。ドレスに合わせて折角してもらった化粧が崩れてしまわないように、私は目元にぎゅっと力を入れる。
確か練習では、二人並んで真っすぐにバージンロードを歩いて行き、正面の所で花嫁は新郎へと託される、という段取りのはず。
ところがバージンロードの中ほどに差し掛かったとき、背後からドアをバーンと開く音が聞こえてきたのだ!?。
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