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恥ずかしさから頭を下げて、その場から走って離れた。
ドキドキが止まらないまま昼休みになった。
「暁さん、3年の白石先輩が呼んでるよ。」
クラスメイトがドアの方に目線を移した。
「ほら。」
ドアの方を見ると手をヒラヒラと振ってニコッと笑った。
また心臓がドキッとする。
「そっち行っていい?」
白石先輩が大きな声で言うと、クラスメイトたちの視線を浴びた。
それが恥ずかしくて下を向いていると
「どうしたの?」
前の席の人の椅子に座って顔を覗き込まれた。
「…なんでもないです。何しに来たんですか?」
「何しにって、朝の答え、聞いてないから。どうして僕だけしか言わないって。」
「……それは…。」
こんな引っ込み思案の私が可愛いなんて誰が思うのだろうと思った。
そう思うと余計に白石先輩の顔を見れなくなった。
「そんなに迷惑だった?僕が来るの。」
しゅんとした声に顔を上げると、悲しそうな表情に
「そういう訳じゃないです…。どうしたらいいか分からないだけです。」
気持ちを吐いた。
すると、白石先輩の表情がパッと明るくなって
「どうしたらいいか分からないなら、笑って。みどりちゃんの笑顔を見せて。」
「笑顔って言われても…。」
「今朝みたいに。」
白石先輩の両方の人差し指が頬に触れて口角の部分を上げた。
またドキッとする。
顔が熱くなっていることを白石先輩に気付かれてしまうんじゃないかと思うと、ここから逃げ出したいと思った。
「白石先輩はそうやって自然に私の心の中に入り込んでくるけど…私は違うんです。」
そういうと、白石先輩がキョトンとした顔をして
「何が違うの?みどりちゃんも僕の心に入り込んでいるよ。」
「え?」
驚いた顔をすると、白石先輩の手が離れて
「誰にでもこんなこと出来ないよ。みどりちゃんだからだよ。」
真剣な表情になった。
「みどりちゃんのこと、可愛いって思ってるからだよ。」
白石先輩が恥ずかしそうに目線を外して
「それは僕だけじゃないと思う…だから、今だけ独り占めさせて?」
小さく呟くと、ゆでダコのように真っ赤な顔になった白石先輩に笑ってしまった。
「あ、笑った。やったぁー!」
クラスメイトの注目もお構い無しに万歳をした。
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