セリヌンティウスは、

2/7
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 王城に入ったとたん、厳しい目で見られて不思議に思った。王に呼ばれてきたと知らないのだろうか、まるで侵入者を見るような目だった。向けられ慣れていないものは、少し気分が悪かった。  重厚な扉が開かれ、あっと声を上げそうになった。なんと、縄に縛られた友がいるではないか。これはどういうことだ。困惑していると、二年ぶりに再会した友は一切の事情を語った。王城に入ったが捕らえられてしまったこと、妹の結婚式が近々あること、自分はそれを挙げさせるために三日の猶予を乞うたこと、人質として差し出すことになってしまったこと……。語るメロスの口調は真剣そのもので、表情は苦しみで歪みそうなのを堪えているように見えた。  メロスの話が終わった後、セリヌンティウスは無言でうなずき、彼をひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは縄打たれ、メロスはすぐに出発した。入れられた牢は薄暗く、唯一の窓には鉄格子がはめられていた。その合間から見えるのは、初夏の満天の星。 「あの男は、きっと約束までに帰ってこないぞ。わしがちょっと遅れて来いとささやいたが、あやつは言い返しもしなかったからな」 「いいえ。メロスは帰って来ます」 セリヌンティウスは祈りをこめて、じっと窓の外を見つめた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!