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セリヌンティウスは、
セリヌンティウスは、信じていた。竹馬の友たるメロスを信じて、見送ったところだった。
はじまりは数時間前にさかのぼる。いつも通り石に向かいのみを動かしていたら、屈強そうな兵士が工房に訪れた。
「セリヌンティウスという石工は、おまえか」
「……そうですが」
よくわからないままに返事をする。兵士はセリヌンティウスに近づき、疑るように全身を眺めた後で、こう言った。
「王がお呼びだ。同行していただこう」
「王が?」
これにはさすがに驚いた。兵士が工房に訪れるなんて珍しいとは思ったが、まさか王からの呼び出しとは。覚えのないことに、軽く瞠目していると、兵士が補足した。
「メロスと名乗る男が、名を挙げたらしい。詳しいことは知らん」
「……行きましょう」
行ってみないことにはわからない。道具を手早く片付けてから、兵士に連れられて王城へと向かった。
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