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「何言ってんの」
「だって……恵美奈ちゃんはもう十五歳だし。
どんどん大人になるし。
これからも、ずっと一緒に暮らせるような気がしていたけれど、そうじゃなかったんだよね。
でもね、ママは恵美奈ちゃんが一番大事で、石渡さんは、その次だから。
だから恵美奈ちゃんがいやなら……」
ああそうだ。そうだよ。
あたしが、ずっとママの一番だったのに。
その座が奪われそうになったから、お邪魔虫だなんてひがんで、子供っぽい焼きもちを焼いていた。
大人ぶって理解したフリをして、龍之介君にまで、心の中で八つ当たりして……。
こんなんじゃダメじゃん。
いい加減、親離れしなくっちゃ。
ママもそろそろ子離れして、
「結婚して、幸せになって」
ありがとう、とママは言った。
あたしは足元の砂を、指ですくった。
細かい砂の中には、黒や金や透明の粒が混じっている。
いちばん透明な、純度の高そうなのをつまんで、太陽の光にかざしてみる。
――キラキラしてる。
「ねえ、恵美奈ちゃんがお嫁にいくとき、ママのダイヤモンドあげようか」
「いらないよ。だってあたし、」
あたしは立ち上がって、おしりについた砂を払った。
「ちゃんと好きな人からもらうもん」
ママが肩をすくめて、それもそうね、と笑った。
帰ったら、龍之介君に電話をしよう。
龍之介君は、情熱的とは言いがたいけど、優しい子だ。
見上げれば、馬鹿みたいに空は青い。
海も砂もキラキラしていて、目が痛いくらいにまぶしかった。
(おしまい)
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