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ソファでテレビを見ていたら、ママがバタバタと帰ってきて、バックを投げ出すなり、あたしの肩を揺すって言った。
「恵美奈ちゃん、ただいま。ねえ、聞いてくれる?」
「おかえり。どうしたの?」
「これ見て」
きゃしゃな指をぴんと伸ばして、ママは、ダイヤモンドの指輪を見せた。
「石渡さんに、プロポーズされちゃったの」
ママの恋人の石渡さんのことは、あたしも知ってる。
石渡さんは横浜に住んでいて、半月に一回くらい、たいていは土曜日に、仙台の家まで、遊びに来る。
「よかったじゃん。受けるんでしょ」
「うん……。春になったら、向こうで一緒に暮らさないかって。恵美奈ちゃん、ついてきてくれるでしょう?」
「考えとく」
「春になったら」というのは、あたしの進学を考えてのことだろう。
大きなコブ(あたしのこと)は、来春、高校生になるのだ。
さあ、どうしよう。
あたしには、ふたつの選択肢があると思う。
A・ママと石渡さんにくっついて、横浜の高校に行く。
B・地元の仙台に残って一人暮らしをする。
悪くないじゃん、ひとり暮らし。
あたしは心の中で、そうつぶやく。
でも、ママはあたしについてきて欲しいみたいだし――。
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