24人が本棚に入れています
本棚に追加
……そう。
――僕の嘘のつき方は、一リットルの水に一滴の血を混ぜるようなものだったのだ。
透明な水の上で、指を突き出す。
指を小さな針でツンと突き刺して、小さな赤をぷっくりと浮きあがらせる。
そして、ふん、と一滴だけ透明の中に赤を放る。
それから、スプーンでも持ってきて、赤が混じった水をぐるぐるぐるぐるかき回すのだ。
そうしてしまえば、一滴だけの赤は透明に混じっていく。
何食わぬ顔で、その一リットルの水を人に見せる。
……反応は人によって違った。
素通りする人、何も考えずに水だと認識する人、少し匂いが変だぞと勘づく人、そもそも見せられた水に興味を持てない人……。
色んな反応があった。
新しい反応を発見する度に、なんだか楽しくなった。嘘を楽しむ自分がどんどん「悪い奴」になっている感じにもなって、「これが『闇落ち』ってやつかな」と余計に愉快になったりして。
悪ぶりたかったんだ。本当に。
ちょっとおバカに見えるかもしれないけれど、それでも、……どうしても。
最初のコメントを投稿しよう!