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第3話 学園生活
私、ニコラ・フォン・シュリュンツが学園に入学して1週間。
女友達と昼休みに雑談していると、友達の一人が突然言った。
「ちょっと。二コラ。後ろ…」
促されて後ろを振り返ると、超絶イケメンが立っていた。
思わず目を見開いてしまう。
「突然に失礼する。フロイライン。私はレギナルト・フォン・セーヴェリング」
「ニコラ・フォン・シュリュンツです」
ドギマギしながらも、なんとか名乗りを上げる。
「初対面で大変失礼な質問をさせてもらうが、フロイラインのステイタスを教えてもらえないだろうか?」
剣士、魔術師などのジョブ及びそのレベルなどのステイタスは、自分では見ることができるが、学園入学時に鑑定魔法が使える魔術師の鑑定を受けている。自己申告では信用ができないからだ。
だが、それは個人情報であり、むやみやたらに他人に開示するようなものではなかった。
「ステイタス…ですか?」
「ああ」
私はたかが騎士爵家の3女。これを開示したところで、命を狙われるというようなことは考えられない。
少し躊躇したが答えることにする。
「聖魔術師のレベル5ですが…何か?」
「本当にそれだけ?」
──? 他に何があるっていうのよ。
「そうか…わかった。どうもありがとう」
そう言うと彼は何事もなかったかのように振り返り、スタスタと去っていった。
そして学園入学から1ヵ月後。
自宅前に豪華な馬車が止まっており…現在に至る。
◆
学園への通学は、伯爵以上の高位貴族は馬車で通うのが普通だった。
婚約者となった私はゼ―ヴェリング様が馬車で送り迎えをしてくださることになった。
今日はゼ―ヴェリング様が初めてお迎えに来てくれる日。
昨夜はドキドキしてあまり眠れなかった。
馬車に乗ろうとするとゼ―ヴェリング様が微笑して手を差し出し、エスコートしてくださった。
イケメンのキラキラとした微笑の破壊力が半端ない。
普段は無表情な方だけに、そのギャップがたまらない。
──ゼ―ヴェリング様ってあんな顔するんだ…
ちょっと感動しちゃった。
馬車の中では向かい合って座った。
恥ずかしくてまともに顔を見られないので、外の風景を見ながらチラチラとゼ―ヴェリング様の顔を窺う。
やっぱりイケメンだ。
鑑賞対象としては最高なのだろうが、私の婚約者なんだよなあ。
そう考えるとなんだか複雑だ。
だが…
「…………」
話には聞いていたが、無口だし、無表情だ。
──え~っと。怒っているわけではないのよね…
それとも、凄いのんびり屋さんなのだろうか?
とにかく、私的には間が持たなくて気まずい。
何か話題はないだろうか?
話題…話題…
そうだ!剣術の話ならどうだろうか…
「ゼ―ヴェリング様は剣術がお強いのですよね。いつ頃から修行を始められたのですか?」
「普通は早くても7歳くらいから始めるのだが、私の場合は物心がついた3歳のときには既に剣を振っていた」
「ええっ!3歳で剣なんて振れるのですか?」
「我が家は剣聖の家系だからね。子供用の特注の短い剣が何種類もあるんだ。体の成長に合わせて剣も長いものに取り換えていく。初めて大人用の剣を振ったのは10歳のときかな」
──やった! なんとか口を開いてくれた。
だが、これからという時に学園に着いてしまった。
これって帰りもなのよね。ちょっとだけ気が重い…
そして学園の帰り。
2人は再び馬車に揺られていた。
少しコツがつかめたので、ぎこちないながらも会話をしていたところ、家に着く間際になってゼ―ヴェリング様は唐突に言った。
「そういえばフロイラインのご両親への挨拶がまだだったね。突然で申し訳ないが、今日この足で伺ってもいいだろうか?」
──えっ! ボロ屋なのは仕方ないにしても、それなら掃除くらいはしておいたのに。
「し、承知いたしました。両親に聞いてみますね」
両親はゼ―ヴェリング様の完璧な紳士的な対応に飲まれてしまい、ほとんど言いなりだ。
結局、結婚は学園を卒業してからということ、学園でのマナー、ダンスなどのレッスンでは不足なので、学校が休みの日はゼ―ヴェリング邸にてレッスンを行うこと…etcがあっという間に決まってしまった。
いままで実感がなかったけれど、私って将来伯爵夫人になるのよね。そして結婚までには淑女としてのスキルを身に付けなければいけない。
──自分のことながら大変だな…
これからも更に大変なことがありそうだが、もう決まったことだ。ここはポジティブに考えよう。
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