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第5話 結婚
3年間の学園生活も間もなく終わる。
私は18歳になっていた。
その間いろいろと努力をした。
ゼ―ヴェリング様との会話のコツもつかんだし、なにより無口なのはおっとりした性格の方なのだと割り切ることもできた。
今では会話がとぎれても気にならない。ここぞとばかりにゼ―ヴェリング様のイケメンぶりを鑑賞する。
だが油断していて、ときおり目が合うとゼ―ヴェリング様は微笑してくれる。
その破壊力のある微笑にはいまだに赤面してしまう。
──いい加減に慣れろよ。私。
マナーやダンスのレッスンも懸命に励んだ。
なんとか社交界に出ても恥ずかしくないレベルには達したのではないかと思う。
初めてゼ―ヴェリング邸を訪れたときは度肝を抜かれた。
執事、侍女、メイド、使用人のほか、剣術の内弟子の方たちがずらりと勢ぞろいして迎えてくれたのだ。
特に内弟子さんたちは、強面でマッチョな人が多かったので少し怖かった。
──でもゼ―ヴェリング様って、この人たちよりも強いのよね…
普段のイケメンぶりからは想像がつかない。
学園の送り迎えの馬車でのイチャイチャは、今では定番となってしまった。
「ゼ―ヴェリング様。もうそろそろ私のことは二コラと呼び捨てにしていただけませんか?」
「それもそうだな…」
「では、二コラ…と」
「ニ…二コラ」
「はい。ゼ―ヴェリング様」
ゼ―ヴェリング様は相変わらず無表情だが、顔は赤面している。
あの無表情も慣れてみると実はコロコロと感情豊かなのだ。
「くそっ。俺ばっかり。二コラも俺のことをレギーと呼べ」
そ、それは…いきなり愛称で呼ぶなんてハードルが高いですぅ。
「レ…レギー……様」
「う~ん。様はいらないのだが…まあいいや」
と言うとゼ―ヴェリング様が顔を近づけてくる。
恥ずかしくてもうゼ―ヴェリング様の顔を見ていられない私は目を閉じた。
そしてゼ―ヴェリング様と私は唇を重ねた。
◆
結婚式の日がやってきた。
誓いの言葉を述べ、結婚誓約書にサインをする。
これでゼ―ヴェリング様と私は一つになるのだな…
なんだかじわじわと感動が押し寄せてきた。
続いて披露宴。
身分不相応な結婚をいまだに悪く思っている人もいるようだが、ゼ―ヴェリング様大好きな私には痛痒を感じない。
特に喜んでくれたのが、ゼ―ヴェリング家の執事、侍女、メイド、使用人、内弟子の方々だ。
執事さんにはさんざんに注意されたのだが、騎士爵家出身の私は、主人として上から目線で接することができず、彼ら彼女らとは友達のように接している。
そしてハラハラドキドキの結婚初夜。
ゼ―ヴェリング様はとても優しくしてくれた。
私はこの上ない幸せに包まれた。
翌朝。
寝ぼけまなこで目を開けると、目の前にゼ―ヴェリング様の顔があった。
「ひえっ!」
慌てて体を起こすと…私は一糸まとわぬ裸。裸ではないか。
ゼ―ヴェリング様がまだ寝ているのに慌てて胸を隠す。
──そうか…昨夜はゼ―ヴェリング様と…
そこで私は気づいた。
なんとステイタスのジョブが「聖女」に変わっているではないか。
──ええっ! いったいどういうこと?
悩んでいるうちにゼ―ヴェリング様が起きてきた。
そして私の顔を見た瞬間、ゼ―ヴェリング様が目を見開いた。
琥珀色の左目が金色に光ったように見えた。
「そうか…覚醒したか…」とゼ―ヴェリング様が呟く。
「レギー様はご存知だったのですか?」
「ああ」
そして夫婦になったのだからと、これまでのいきさつをすべて話してくれた。
「では結婚は皇帝陛下の命令だったのですか?」
私は少なからぬショックを受けた。
「だが、誤解しないでくれ。きっかけはどうであれ、俺は二コラを心から愛している」
その言葉を聞いて、心から安堵した。
「レギー様…」
私は生まれて初めて自分から求めてキスをした。
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