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「そこの市場のおじさんに聞いてきてあげるから待っててね。もしかしたら知っているかもしれないし」
「うん! おねがいします!」
きちんとお願いできるゼロスにお姉さんは「なんていい子なのっ」と感動しながら市場に向かった。
お姉さんは市場で露天商のおじさんに説明している。するとおじさんはゼロスとクロードを遠目で見ながら涙ぐみ、紙になにやら書いてお姉さんに渡した。間もなくしてお姉さんが戻ってくる。
「お待たせ。あのおじさんが分かりやすい地図を書いてくれたから、これで店に行けるわよ」
「ほんと!? やった~! どうもありがとう!」
「一緒に行ってあげたいけどもう帰らなくちゃいけないの。ごめんね?」
「ううん、だいじょうぶ! ぼく、ちゃんとできるから!」
「賢いのね、これおじさんから頑張っている君たちにプレゼントだって」
「わああっ、リンゴだ~!」
ゼロスとクロードはお姉さんからリンゴを受け取った。クロードのリンゴは赤ちゃんでも食べられるように小さく切ってくれてある。
ゼロスはおじさんに向かって大きく手を振る。
「おじさん、どうもありがと~!」
「がんばれよっ、強く生きるんだぞ!」
おじさんが涙ぐんで手を振ってくれた。
よく分からないけれどとても応援されているようだ。
こうしてゼロスとクロードは親切なおじさんとお姉さんに見送られて歩きだしたのだった。
「えーと、ここをまっすぐあるいて、こっちのおっきなみちをとおって……」
ゼロスは地図を見ながら歩いていた。
ゼロスはまだ三歳だがお城でお勉強を頑張っているので簡単な地図なら読めるのだ。
リンゴもくれて分かりやすい地図も書いてくれて親切なおじさんだった。リンゴもとってもおいしかった。気分はとってもいい感じ。
「あぶあー、あー」
おんぶしているクロードも指を差してなにやらおしゃべり。
クロードなりに地図を読んで道を考えているようだ。
「クロードはこっちだとおもうの?」
「あいっ」
「えー、でもちずはこっちってかいてあるのに?」
「あう~っ」
下唇を噛みしめるクロード。
落ち込むクロードをゼロスは励ましてあげる。
「げんきだして。クロードがおっきくなったら、ちずのよみかたおしえてあげるね。ぼく、おべんきょうしてるからわかるの」
「あいっ」
二人はおしゃべりしながら賑やかな大通りを歩く。
石造りの美しい街並みと、そこを笑顔で行き交う馬車や人々。ずっと眺めていても飽きないくらいだ。
楽しくなったゼロスはきょろきょろしながら歩いていたが、ふと気付く。
「あれなんだろう。ひとがいっぱいいる」
通りに人だかりができていた。
人だかりからは怒声や歓声が上がっていてとても盛り上がっているようだ。
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