4人が本棚に入れています
本棚に追加
はっとした。見ると、ペールイエローのワンピースに、きらりと光る大きなフープピアス、綺麗なピンクのリップに、これまたイエローのヘアターバンをした、二十代後半くらいの美しい女性が、こちらに微笑みかけていた。
「あ、だ、大丈夫です。すみません。」
「そう? でも、とても疲れてるみたい。」
疲れてる? 私、疲れていたの? 知らない人のその言葉が、なぜか胸に深く染み込んだ。少しだけ何かから許されたような気持になり、また涙が出そうになる。
彼女は、ディオールの黒いハンドバックから、平たいピンク色の箱を取り出し、中から出てきた淡く黄色いタバコをくわえた。
「これ? 変わったタバコでしょ。ソブラニー・カクテルっていうの。吸ってみる?」
一口もらうと、やわらかい風味が口に広がる。吸ったあと、甘くさわやかな香りがほのかにした。
「ごめんね、少し香水のにおいがしたでしょ。箱にふってるの。」
彼女はそう言ったあと、にこっと笑った。映画の登場人物と話しているようで、少しめまいを覚えるほど美しかった。
「あなた、名前は?」
「水戸、芽衣子です……。」
「かわいい名前ね。」
最初のコメントを投稿しよう!