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言ってから、廊下の窓に映る自分の顔を見て、はっとした。またやってしまった。胸のあたりにモヤがかかり、空っぽになった胃が、不安げに捻じれた。安住さんが今日も怒られている。それを話題にしてしまった私は、なんて卑怯で最悪な人間なんだ。という念が、一気に胃の奥底から、酸っぱい液体と共に押しあがってきた。でも、今はダメだ。そんな感情一つ表に出してしまえば、これまで私がとても大切にしてきた何かが、一気に崩れ去り、その破片をみんなに拾い上げられ、笑われる。軽蔑される。幸い、愛子ちゃんは気づいていない。ああ、やっぱりその横顔は、憎らしいほどとても綺麗だ。
食堂につくと、愛子ちゃんに次ぎ二番目のキラキラガールである同期の美沙ちゃんと、社内で一番かわいいと噂の後輩、茉莉ちゃんがいた。いつものメンバーだ。毎年、その三人が企画する箱根旅行があるのだが、そのメンバーに選ばれるかどうかで、社内の女子連中はざわつき、見下しあう。去年は私と、同期のなつきが選ばれた。……楽しくなかった。
「そういえば今日もアズミン、怒られてたらしいじゃないですか~。」
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