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午後五時をすぎ、そろそろ掃除と片付けの時間に差し掛かっても、今日は安住さんのことで、頭がいっぱいだった。自己否定と虚勢の海に、おぼれてしまいそうだった。
「はじめまして。安住たまきです。芽衣子さん、これからよろしくね。」
安住さんは、最初私にそう言った。お互い初々しい新卒のスーツに身を包み、今日見せたそれとは違う、子供みたいな顔で笑った。
「はい! あ、うん! よろしく安住さん。」
私たちはそのあと、一緒にお昼ご飯を食べた気がする。そうだ、その時はじめて豊島課長に「もう友達ができたんですか?」と声をかけられたんだっけ。そうだ。あの時は、不安だらけだったけど、同期もみんな仲良くて、とても楽しかった。
「……とさん! 水戸さん!」
「は! はい!」
聞きなれた鋭い声。急に豊島課長に呼ばれた。コーヒーメーカーが、不穏な耳鳴りにも似た音を出す。
「水戸さん、これどういうこと?」
「え?」
嫌な予感がする。豊島課長の左口角が上がっているのは、これからお前を痛めつけてやるぞ、という合図なのを、知っている。
「えじゃないだろ! こんなミスして! お前のせいでみんなの頑張りが台無しなんだよ!」
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