第一話 かわいそうにね、芽衣子ちゃん。

9/18
前へ
/65ページ
次へ
 愛子ちゃんたちが話しかけてきた。 「芽衣子ちゃん、大丈夫?」 「う、うん。ごめんね。私のせいで、企画書作り直しになっちゃって。」 私はできるだけ気丈にふるまいつつ、甘えるようにそう言った。 「別に大丈夫よ。」 愛子ちゃんは、意外とさらりとしていた。少し、安心した。 「ほんとにごめんね、次は絶対ないようにするから、」  私がそう言い終わる間もなく、愛子ちゃんが口を開いた。 「あ、そういえば芽衣子ちゃん、今年の箱根旅行、なつきちゃんとめるちゃんと行くから、芽衣子ちゃんはお休みしてもらえる? ごめんね。」  え? 息が詰まった。コンマ一秒、呆気にとられ、目の前が真っ暗になった。たちまち愛子ちゃんたちに責められている気分になった。同期に責められるのが一番、何よりきつい。心臓が雑巾のように搾り上げられる。私の顔は捻じり切られる。いや、だめだ。顔に出すな。顔に出すな。 「え、あ、うん! 全然大丈夫だよ!」 「ごめんね。じゃあおつかれさま~。」
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加