ばあさん

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 お世辞にもきれいとは言えない和室。耕平は改めて見回した。今時あるのかと思わず二度見するブラウン管テレビ、隣には古びた木材と成り果てている5段引き出しがおいてあった。  そしてばあさんのすぐ後ろに観音開きのお仏壇。  目に入る家具はこのくらい。  畳みはところどころ、湿ったハンカチや、黄ばんだ文庫が散らばっていた。  金目のものは部屋にはない。  銀行のカード、印鑑、通帳、万札が入った茶封筒、財布、クレジットカード  それらはすべて、耕平の膝の革鞄の中に収まった後だった。
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