ラプラスのいうとおり

2/8
前へ
/8ページ
次へ
 人類が世界の終わりを解き明かすきっかけとなった『唯一絶対決定論』が世の中に認知されたのは、今から百三十年前のことだった。この唯一絶対決定論が人々の耳に入った当初、それはさながらノストラダムスの大予言レベルの低俗なオカルト話として、インターネットを火付け役とし爆発的に世界中で話題になった。  オンラインで際限なくコピーアンドペーストされ、何度も改変されたこの唯一絶対決定論は要約すると、 【我々のあらゆる行動は、ベースとなる様々な要素によってあらかじめ決定付けられています。そのベースとなる要素にもまたベースがあり、そのまたベースにもベースがあり――つまるところ、この広い広い宇宙というものは誕生した瞬間に全てが決まっていて、我々はいかような場合でもそれに抗うことなど不可能なのです。そのうえで、長い時を経て英知を養った我々人類は、この理論を逆算することにより近い将来、最果ての未来までをも予期することができるようになるでしょう。全ての終末は誕生と共に決められていました。もうすぐ我々はそれを前もって知り得るのです】  とのことだった。それまでも、哲学や量子力学の世界に「決定論」という言葉は存在していた。しかし、哲学としての決定論はあくまでも机上の空論でしかなかったし、量子力学における決定論に至ってはその可能性を完全に否定されているものでしかなく、誰もが「必ず当たる未来予知なんて起こせるはずがない」と信じ切っていた。  皆は唯一絶対決定論を一過性の、流行り物の噂話としてのみ捉え、それなりに弄び、飽きたらポイと抛り捨てるつもりで好き好きに語り合って過ごした。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加