「おやすみなさい」の声をきかせて

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窓からのりだして、あたりを見回す。 道には誰もいない── なんだろう……と思っていると、昨日のあの人が、ジュースを買っているところが塀越しに見えた。 またジュース買いにきたんだ。後ろ姿を見ていると、彼が振り返りパチンと目が合ってしまった。 「昨日はごめんね、それどうぞ」 今度はレモネードソーダを3本かかえた彼が、ニカッと笑う。その笑顔は、目が眩むかと思うほどキラキラだった。まぶしいのをがまんしながら、なんとか言葉を絞り出す。 「これ? いいんですか?」 「うん、昨日飲めなかったでしょ? きょう、補充されてるの見たから」 「あ……ありがとうございます」 私はグレープソーダをありがたく受けとって、ペコリと頭を下げた。 「それじゃ、おやすみなさい」 「おっ……、おやすみなさい」 小さく手を振って、彼は会社の寮の方へ歩いて行った。やっぱり、寮に住んでるのかな。
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