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その日の夜は、待ち伏せのごとく、聡太が自販機に来るのを自分の部屋の窓越しに、いまかいまかと待っていた。
パタ、パタパタ。いつものサンダルの音がすると、あわてて玄関から飛び出して、大股3歩で自販機に到着した。
「ちょっと、私が同じ高校って知ってたんでしょ? 何で言わないのよ」
やってきて早々に啖呵を切られて、聡太は目を丸くしていた。
「知ってたよ、母親が近所の人に聞いたみたい。それが?」
「言ってくれればよかったのに……」
私はがま口の財布をパチンと開けて小銭を出すと、グレープソーダのボタンを押した。
「夏休みあけに、俺が行けばビックリするかと思ってさ」
「それ、意味ある?」
ガタンと出てきたグレープソーダを取り出すと、プシュッと蓋をあけ、ゴクゴクと飲んだ。かーっ! おいしい!
「お前って、けっこう気が強いのな。お天気の話しをする、しおらしい女の子はどこいった?」
グレープソーダをがぶ飲みする私の姿を見て、呆れたように聡太は息を大きく吸って、ため息をついた。
「悪かったわね。あぁ、5分の逢瀬のときめきも、もはや夢とついえてしまったわ」
「はぁ?」
聡太は眉間にシワをよせて、腕組みをして自販機にもたれかかった。
「素性を知らない感じが、ミステリアスでよかったのよ。あたしはてっきり、年上の社会人だと思っていたのに……。もういまとなってはただのクラスメイトでしょ。あのときめきはもう味わえない……」
「ただのクラスメイト……ね」
そう言って聡太は私のほっぺたを片手でつかむとムニムニっとした。息がかかりそうなほど、顔が近づいてきて、心臓がきゅっと小さくなる。
「じゃあ、ただじゃないクラスメイトになろうぜ」
えっ──と私が言い終わらないうちにぎゅっと抱き寄せられた。
「??????」
いったいぜんたい、なにが起こったのですか、神様!?
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