「おやすみなさい」の声をきかせて

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夏休みのあいだ、自動販売機の逢瀬は何度も繰り返された。 なんとなく彼のサンダルの音がわかるようになってきた私。その音に気がつくと、いそいそと出て行って、ジュースを買う彼の後ろに並び、ひとことふたこと話をするようになっていた。 風呂上り、勉強をして寝るだけなのに、髪をおだんごにしたり、横に流してみたり。わざわざ街まで出て購入した、ふわふわもこもこパジャマを着たり。 ちょっとだけ、すてきに見えるようにいつも用意しているので、母親はいたく不思議がっていた。 好き──とまではいかなくても、ほんの少しドキドキする。それが楽しかった。 出て行くのも、毎回だとあやしまれるから、3回に1回くらいにとどめておく。 本当は毎回出て行きたかったけれど、160円がボディブローのごとくお小づかいに効いてくるので、コントロールして。 あー、ジュース買わなくても彼に会う方法はないだろうか。日中、会社の寮の前を何度か通りかかったけれど、彼に会うことは一度もなかった。
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