死婚

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 「‥‥、亜紀子さん」  「はい」  「私と‥‥」  「‥‥、はい」  「‥‥、お付き合いして下さい!」  「えっ?‥‥」  突然の告白に驚きを隠せず、どう答えていいのかわからないまま言葉を探していた。  「勿論、今直ぐに返事を聞かせてとは言いません‥‥、真剣に考えて貰えませんか?」  「……、はい、わかりました」  ……、嬉しかったんだ。  ……、涙が瞼の裏まで迫っていた。  ……、瞬きすれば大粒の涙が溢れてくると、感じていた。  「一つ聞いてもいいですか?」  「はい、何でも聞いて下さい」  私は、会ってまだ二度目なのにと、身寄りもない、何の取り柄もないおばさんなのにと、智彦さんの人柄と次期社長ともなる人が独身であるという、ずっと引っ掛かっていた事を聞いたんだ。  智彦さんは私の質問にゆっくりと答えてくれた。
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