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「特別養子縁組で今の家の子供になり、何不自由なく育ててもらった。世間から見ても私自身も羨ましい限りで、今の両親には本当に感謝してます。こんな家柄ともなると、やはり跡取りは会社存続に関わる死活問題事で、結婚して子供をと……、私が二十代後半位から今日まで数え切れない程‥‥、お見合いしてきました。未だに独身と言うことは全てお断りさせてもらったからで‥‥、生涯共に歩んで行ける方とはお会いできなかったからです。私は、産まれてくる子供に会社を継がせようとは、思っていないんです。本人が継ぎたいと言うのであればそれは構わない‥‥、子供が進みたい道を歩ませて、その応援をしていきたいと、強く思っているからです。だから、家柄や財産だけで結婚を考えている方とは生涯共に歩んで行ける訳はなく、わざわざ不幸を選択する必要など無いと考えてるからです。本当の両親に愛されて育ってないからこそ、産まれてくる子供には、無償の愛を持って育てて行きたいと強く心に刻み込んでいるからです。これが未だに独身でいる理由です」
静まりかえった座敷に私の鼻を啜る音が妙に響いていた。
なんて真っ直ぐな人なんだろうと、胸が熱くなるのを必死に抑えていた。
「‥‥、何故、亜紀子さんに告白したのか‥‥それは‥‥」
智彦さんは真っ直ぐ私を見つめていた。
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