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「お待たせしました」
女将さんが料理を運んで来た。
「‥‥、ご両人さんはどっちの涙?」
「良い返事を頂きまして‥‥」
智彦さんが照れ笑いを浮かべながら、ネクタイをまた緩めた。
「お似合いのカップル誕生だね、良かった良かった!後で一緒に乾杯させてね?」
女将さんはそう言いながら座敷を後にした。
「‥‥、ただ‥‥、不安と言うか‥‥」
「内の両親の事ですね」
「えっ?あっ、はい‥‥」
私の不安を智彦さんは察していた。
「亜紀子さんは何も心配しなくて大丈夫だよ。正直、間違いなく反対されます‥‥、私が必ず説得しますから、私を信じて下さい。約束します」
「‥‥」
智彦さんはちゃんと考えてくれていたんだと嬉しさと安心が一瞬芽生えたけれど、どうしても不安の重圧は拭いきれなかった。
簡単な事だとは思えなかった。勿論、智彦さんも同じ気持ちだと思えるからだ。
でも、智彦さんを信じて、智彦さんと二人歩きしたい。
また、静寂が支配していた。
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