死婚

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 あれから、月日は流れて11月が終わりを告げようとしていた。  オリオン座が東京の空に辛うじて光っていた。  師走が目前に迫り、東京の街並みは何処もかしこもクリスマス色に染まり、赤と緑が所狭しと至る所で色付いていた。  街路樹は艶やかな光に満ちて、より一層東京の星空を掻き消して、通りを忙しなく歩く人々の視線は、夜空ではなく街路樹に留まっていた。  その街路樹を脇にそれて、駅前へとブーツのコツコツをビルに反響させながら歩いていた。  ‥‥、毎日が充実していたんだ。  ‥‥、時折、幸せが怖くなるくらい、智彦さんの事が頭の中を支配していた。  ‥‥、何年振りだろうか?クリスマスプレゼントを考える自分が此処に居るという確かな存在感‥‥。  ‥‥、年甲斐もなく毎日胸の中が、はしゃぎ廻り、温かい気持ちが、幸せを運んで来る。  ‥‥、クリスマスがこんなにも待ち遠しい。  智彦さんと出会ってまだ数ヶ月だと言うのに、もう、何年も智彦さんと会ってる気さえしてくる。  それ程、智彦さんとの時間は私にとって、無くてはならない時間になっていた。  ただ、その幸せな時間の微かな隙間をこじ開けるかのように、時折不安が顔を覗かせる。  智彦さんは私の事を智彦さんの両親に話したのだろうかと、全て任せてと言われた以上、私の方から聞くこともできず、その度に乱れそうになる呼吸を溜息で誤魔化していた。  智彦さんを信じてはいるものの、「間違いなく反対される」と言った智彦さんの言葉が頭の中で通り過ぎる事は無く、必ず頭の片隅に居座っては、不安を連れてくるんだ。  電車の車窓から流れる景色をやり過ごしながら、そんな事を考えていた。  時折車窓に映る自分の顔が、まだ見ぬ智彦さんの両親の顔と瞼の奥で交差する。  ‥‥、きっと、厳格なお二人なんだろうなと、勝手に想像していた。  
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