死婚

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 智彦さんとは週末にいつもの小料理屋で、ほぼ毎週会っていた。  智彦さんは敢えて会社や両親の話はしなかったように思えた。  自分自身がどんな育ち方をしてきたのとか、特別養子縁組の事を初めて聞いた時、記憶が飛びそうになるくらい複雑な感情が胸を締め付けてあげて、丸ニ日間部屋に閉じこもって現実を受け止めようと格闘した十二歳の夏の事。  両親や世間が敷いたレールを脱線することなく走り続けてはきたけど、結婚となると自身の考えや思いは決して曲げなかった事などを話してくれた。  時には、失敗談や取引先の方を怒らせてしまった話しなど、お腹がよじれそうになるくらいの笑い話もしてくれた。  私は壱岐島の星空の話や、海の話し、自然と時間を共有しながら育った話しを時間を忘れて夢中で話した。  そして、待ちに待ったクリスマスイブが目の前に迫っていた。
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