死婚

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 シャワーを済ませベットに仰向けになりながら、有頂天にブレーキをかけて、気が早すぎる自身にゲンコツを一発お見舞いした。  ……、冷静にあれこれ考えてみたんだ。  薄暗い天井を見つめながら、過去が走馬灯のように駆け巡る。  「……、ごめん……、親がさ……やめとけって煩くて……、結婚は無理かも……」  親がって……、それを聞いた瞬間冷めた事。  「今度、亜紀子の両親に会わせてよ?」  「……、親は居ないんだ」  「ん?居ない?ん?どう言う事?亜紀子が存在する以上、親は必ず居るはずだけど?」    「……、私が産まれて直ぐに二人共蒸発したみたいで、引き取り先もなくて孤児院で育った」  「……、もっと早く言えよ、そんな大事な事……」  「……、ごめんなさい」  「騙すつもりだったのか?」  「まさか!そんな……、騙すなんて」  「じゃあ、何で今なんだよ!」  「……、言うと嫌われると、……思って」  「はぁ?……、俺んちの家系知ってるよね?無理や、無理々、俺の親を説得する理由が見つからないから」  ……、また親に選択権を与えてる。  解らなくはなかったんだ、反対される理由を解らなくはなかった。  解って貰おうとも、思ってなかった。  両親が蒸発して孤児院で育った事は事実で隠しようがないことだった。  私自身を信じて、愛してくれてはなかったのだろうか?  私自身に罪があるのだろうか?  そんな事実を知らされながら産まれてきたんじゃない。  物心が付いた頃に、現実を実感したんだ。  まるで産まれてきたことに罪があるような、そんな憤りに、さい悩まされて生きてきた。  ……、智彦さんは違うと、信じようと、自身を何度も何度も勇気づけて、プラス思考か優位に立つように薄暗い天井に願いを込めていた。
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